あいがえ企画

八丈島にUターンして仕事づくり。日々の雑記。

136日目~やがて海へと届く~

彩瀬まるさんの『やがて海へと届く』を読んだ。

最近は、実用書的やエッセイなどばかりで小説を

読んでいなかったので、ふらっと本屋に入ったとき

目にとまったこちらを購入した。タイトル買いだ。

 

買ってから本をひっくり返して、あらすじを読んで気が付く。

あの震災をテーマに書かれた物語だ。

 

そうか、だから海へと届くか、と思い読み始める。

 

『親友の死を悼む私』と『歩き続ける私』が交互に

物語を紡いでいく。

 

普段生活していると少しずつ忘れてしまう

『死』というものが、そこにある。

大きな大きな力。波のようだと私は思う。

 

たどり着いたシーンはとても美しかった。

とても好きな情景だった。

 

最後のシーンはきっと救いで、死んだあとなんてわからないけれど

生きた人間がきっと、そうだって、信じて書くから

とても悲しいけれどまぶしい。よかったなと思う。

 

なんとも、言葉にするには難しい題材だ。

でも私は読んでよかったと思った。

 

小説を読むと、体が言葉で満たされる感じがする。

そして、やっぱり、いろんな人から借りた言葉で

私は成り立っていると思う。

言葉を注がなければ、言葉が出てこなくなる。

体も、全部、借り物、という思いがいつからかずっとある。

なんでだろう。

 

でもだから、たくさんの刺激を受けて

自分の中を満たしていたい。

 

なんだか、毎年春はこんな感じだなあ。

たくさんの芽吹く気配に自分も新しくなりたがる。

現実と理想との間でぐちゃぐちゃになる。

色々なものが枷のように思えて、自由だった自分を掘り返してみる。

思い返してみると自由に感じるが、当時は今とおんなじことを考えていた。

自由とはなんだろうな。ないものねだりか。

 

そうこう考えては、でも、やっぱり私の、借り物でない核のところに

島が存在するのは確かなんだろう。

いつの日も変わらずそこにある。

 

海が見たいなあ。